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津田 なおみ

シネマティック・ロンダン

新作映画が出るたびに、どの映画を観ようか悩む人も多いのでは?シリーズ「シネマティック・ロンダン」では、フリーアナウンサーであり、映画パーソナリティーでもある津田なおみ氏による、おすすめ映画のレビューをいち早くご紹介します♪

『希望峰の風に乗せて』

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

映画を見に行く時、タイトルから様々な想像をして出かけるものですね。「希望峰の風に乗せて」から想像するのは、青い空、どこまでも続く大海原、セーリングする爽やかなヒーロー。そんな主人公がレースに出て困難に打ち勝ちながら優勝する。そんな物語かと思っていたら、予想外の結果が描かれ驚倒しました。しかも実話だというから二度びっくり。

 

1968年、米露が宇宙開発に力を注いでいる中、英国は海洋冒険ブームに沸いていました。そんな中、単独無寄港世界一周という過酷なヨットレースが開催されることになります。ベテランセーラー達が名乗りを上げる中、外洋にすら出たことのないビジネスマンのドナルド・クローハースト(コリン・ファース)が参加を表明し、レースは一気に色めき立ちました。妻(レイチェル・ワイズ)の心配をよそにアマチュアの勇気ある参加にスポンサーがつき、取材陣がやってきて彼は一躍有名人になっていきます。しかし、いざ、レースとなり、外洋に出た彼を待っていたのは、想像以上の自然の過酷さ、船内でのトラブル、耐えがたい孤独だったのです。

 

本作は「正直さ」についての物語です。人は自分をよりよく見せたいと、つい嘘をつく。周囲の期待が高いほど、自分の気持ちをおざなりにして、「どう答えるべきなのだろうか。」に支配されます。そうなったら後には戻れない。出港前にみせたクローハーストのユーモアで家族を包む姿と、出港後の自分を見失い不可解な行動をする姿は、到底、同一人物だと思えません。一つの嘘をついたことから、さらに嘘を重ね、ついに追い込まれてしまいます。そんな彼ができた解決策は、ただ不正直な行いを直視し、「私は嘘をつきました、なぜなら怖かったからです。」と言う勇気だけでした。たとえ、それで厳しい批判や価値判断が下されたとしても、いつかきっと諦めなければ、再生できたはずです。『博士と彼女のセオリ-』のジェームズ・マーシュ監督は不完全な男の暗い内面を、真っ青な水平線と対比して描いていきます。主人公の行動を自分に置き換え、思わず内省してしまう作品です。