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津田 なおみ

シネマティック・ロンダン

新作映画が出るたびに、どの映画を観ようか悩む人も多いのでは?シリーズ「シネマティック・ロンダン」では、フリーアナウンサーであり、映画パーソナリティーでもある津田なおみ氏による、おすすめ映画のレビューをいち早くご紹介します♪

『女王陛下のお気に入り』

(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation.

アメリカより一足早く開催された英国アカデミー賞では、最多7冠を総なめにした『女王陛下のお気に入り』です。舞台は、18世紀のイングランド。アン女王と彼女に仕えた女性2人が繰り広げる宮廷ドラマです。

 

この作品の上映中、私はほとんど瞬きをしていなかったかもしれません。それ程、人間の欲望を満たすために相手を蹴落としていくさまが恐ろしいのです。しかし、その怖さも、見続けているとだんだん「わわ、ここまでやるかっ!!」と可笑しくなってきて、ラストには笑いへと転化していきました。怖いジェットコースターに乗って、それがあまりにも怖すぎると、もう笑うしかない・・・。まるでそんな感じです。

 

ルイ14世が統治するフランスと交戦中のイングランド。揺れる国家と身体の弱い女王のアン(オリヴィア・コールマン)を操っているのは、女王の幼なじみであるレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)でした。サラは、政治に無頓着で欲望だけに生きている女王の裏で、誰よりも影響力を持ち、知識と経験を駆使して権力を掌握していました。ところが、宮中に没落貴族でサラの従兄弟にあたるアビゲイル(エマ・ストーン)が来たことから事態は変わり始めます。

(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation.

冒頭は、女王がサラに、莫大な公費を使って建設中の宮殿(現・世界遺産のブレナム宮殿)を、プレゼントすると会話している場面。サラの夫が率いる軍が、フランスに大勝利をおさめたご褒美のようです。君主の一言で、側近の人生が大きく左右する時代。宮廷内で誰から寵愛を受けるかは最も重要なことです。何がなんでも貴族に返り咲きたいアビゲイルは女王とサラの親密な関係に割り込み、若さを武器にして、周囲から馬鹿にされている女王の孤独に寄り添い、したたかにのし上がっていきます。

 

国家の安泰より、自分が誰よりも重要な人物として扱われることを優先する女王。地位を得るために女王を利用する2人の女性。ため息が出るほど美しい衣装を身に纏った人物によるドロドロの愛憎劇が、絢爛華麗な宮殿内で繰り広げられます。時代劇では、あまり使用されない超広角やスーパースローを多用したカメラワークも、登場人物の下心を煽るようで新鮮です。たった数人のエゴイスティックな感情だけで、世界情勢が変わるなんて・・・。昔も今も変わりませんね。こうして、映画として俯瞰でみると、なんと恐ろしいのでしょうか。

 

ただ、人を陥れて地位を持つと幸せになれる、というのは幻想です。やればやり返されるのは世の常。次は自分が陥れられるかもしれない。恐怖に包まれながら生きる彼女達に幸福な笑顔はありません。あるのはひきつった作り笑顔だけです。アカデミー賞の前哨戦と言われる、ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門で受賞した本作。「昼メロ」のようなドロドロの展開にクスクス笑えるのは観客だけなのです。

 

2月15日公開 上映時間、2時間