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上中 康司

潮流

毎年様々な話題に事欠かない経済ニュース。例えば、世界経済に大きな衝撃を与えたリーマンショックは10年も前の話だが、今もなお、その記憶は生々しく残る。いつどうなるか分からない経済状況を踏まえ、我々は自分の資産をどう守れば良いのか?シリーズ「潮流」では、世界の政治・経済情勢に精通した筆者による、実践的な資産防衛術を紹介する。

次なるテーマ株を探せ!~親子上場解消、TOBについて(その1)~

いよいよ今年は東京オリンピックが開催されます。

東京でのオリンピック開催が2013年9月に決まると、関連施設の建築や周辺エリアの再開発などを期待し、

建築、土木、不動産といった銘柄がテーマ株として人気を集めました。 また、 …

いよいよ今年は東京オリンピックが開催されます。
東京でのオリンピック開催が2013年9月に決まると、関連施設の建築や周辺エリアの再開発などを期待し、建築、土木、不動産といった銘柄がテーマ株として人気を集めました。
また、テロ対策強化から警備関連銘柄、オリンピックに向けて人気が高まるスポーツ関連銘柄など、東京オリンピックに関連する銘柄は、ここ数年市場の注目を集めてきたのです。

しかし、そうした動きもオリンピックの後には収束するでしょう。
そのため、次なるテーマ株をお探しの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、これから市場が注目する可能性の高いテーマについて説明します。
それは、親子上場解消とTOBです。
どうしてこのテーマが今後市場の注目を集めるのか、解説します。

上場子会社のガバナンス強化と親子上場の問題点

昨年3月に開催された未来投資会議において、安倍首相は関係閣僚に対し、上場会社の子会社のコーポレートガバナンスについて、これを高めるルールを作るように指示しました。

安倍政権は発足後、コーポレートガバナンスの強化を行っています。
例えば、東芝やオリンパスなど名だたる企業の不祥事が相次いだことから、第三者の視点から企業の経営をチェックするための機能の一つとして、社外取締役の登用を進め、全取締役の3分の1以上を社外取締役にすべし、という指針を掲げました。
また、企業の競争力や収益性を高めるために多種多様な人材の登用を促進し、その方法の一つとして、女性取締役を1名以上登用するとの指針も掲げたのです。

これらの指針により、日本企業の稼ぐ力を高め、国際的な競争力を高めようというのが安倍政権の狙いです。
これを受け、東証一部上場企業を中心に、社外取締役の数を増やしたり、女性取締役の登用を進めたりと対応してきました。

この流れに加わったのが、本原稿のタイトルにもある、親子上場の解消で、昨年3月に行われた未来投資会議において、新たに上場子会社のガバナンスが取り上げられたのです。

どうして上場子会社のガバナンスが加わることになったのかというと、親会社が50%超の議決権を保有する子会社を上場させるのは日本特有で、上場子会社の少数株主の保護が蔑ろにされている、との批判が主に海外投資家から出ていたからです。

実は、親子上場に関しては、これまでも様々な議論が行われてきました。
2000年代に入り「子会社上場を一律に禁止すべきかどうか」ということが議論されましたが、世界的にみると、子会社の上場そのものを禁止している国はなかったのです。
そのため、東証は、「子会社上場を一律に禁止するのは適当ではないが、子会社上場は必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない」との見方を示し、親子上場について曖昧な状態が今日に至るまで続いてきました。

風向きが変わったのは、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システム研究会」で本問題が取り上げられたことがきっかけです。
同研究会は、2019年に「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」を策定しました。
そして、同ガイドラインの「上場子会社に関するガバナンスの在り方」の中で、親子上場には構造的な利益相反リスクが存在することや、国内外の投資家から、上場子会社という形態の合理性やその一般株主の利益保護の在り方について疑問視する声や、上場子会社の企業価値が資本市場においてディスカウントされている可能性を指摘する声もある、と述べています。
(参照:https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003_01.pdf

親子上場が少数株主に与えるデメリット

経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会の指摘ももっともで、親子上場の場合、親会社が子会社をいいように利用するケースがよくみられます。
例えば、親会社から子会社が資材等を調達したり、親会社へ資金を貸し出したり、というのはよくあるケースです。また、将来性の高い優良な事業を親会社へ譲渡するケースもよく見られます。
これにより、過半数を占める大株主である親会社は得をしますが、少数株主はどうでしょうか?
親会社から押し付けられた不利な条件で、子会社が資材を調達することもあるかもしれません。
親会社への資金の貸し付けが、子会社の財務上の負担になる可能性だってあります。
また、将来性の高い優良事業を親会社に譲渡することで、子会社の成長は阻害されてしまうでしょう。
これらのことが重なった結果、株主に還元されるべき配当は異常に低くなってしまいます。
子会社の株を保有する少数株主にとって、親子上場はうま味がないどころか、不利になってしまうのです。

このように、親子上場している銘柄は、株式投資で多くの投資家が注目する「企業の成長性」において、問題をはらんでいることが分かります。
既述のとおり、親会社が子会社をいいように利用することで、子会社の業績が伸び悩んだり低成長が続いたりしてしまうのです。

このように、親子上場はかねてから問題視されていたものの、大きな変革がされることのないまま放置されてきました。
いよいよここにメスが入ろうとしており、株式市場が注目するテーマの一つになろうとしています。
次回も、親子上場解消とTOBについて取り上げます。

上中康司 拝