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上中 康司

潮流

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次なるテーマ株を探せ!~親子上場解消、TOBについて(その3)~

前回、前々回と親子上場解消に関する問題点と実例を解説しました。

今回は、親子上場をめぐる企業の動向と、上場子会社株について解説します。

今後さらに進む親子上場の解消 前回までの2回にわたり、親子上場に関する問題点を取り上 …

前回、前々回と親子上場解消に関する問題点と実例を解説しました。
今回は、親子上場をめぐる企業の動向と、上場子会社株について解説します。

 

今後さらに進む親子上場の解消

 

前回までの2回にわたり、親子上場に関する問題点を取り上げました。
これまで書いたとおり、現在、親子上場を巡っては、コーポレートガバナンス上の問題と政策的な後押しもあり、解消する動きが活発化しています。
経済産業省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」や東証の市場改革、そして、コーポレート・ガバナンス・コードの改定などで取り上げられる可能性が高く、今後も株式市場の重要テーマとして注目されることが考えられます。
何しろ、親子上場企業数が市場に占める割合が日本は他の先進国に比べても高いのです。
欧米先進国に関していえば、親子上場企業数がその市場に占める割合は、米国が0.5%、英国が0%、フランスが2.2%、ドイツが2.1%となっています。
それに対し日本は6.1%です。
欧米先進国の中でも比較的親子上場の割合が高いフランスやドイツの約3倍もの企業が親子上場していることになります。
このようなことから、特に海外投資家からの批判が集まっているのですが、日本の株式市場を海外投資家が占める割合は6割以上とかなり高く、日本の株式市場を活性化させたい安倍政権としても、彼らの声を無視するわけにはいきません。
上場企業が特に気にするのは、東証の見解です。
以前も書いたとおり、2000年代に入ってから東証が親子上場に対して出した結論は、「子会社上場を一律に禁止するのは適当ではないが、子会社上場は必ずしも望ましい資本政策とはいえない」というものでした。
しかし、現在は政策の後押しもあり、さらに一歩踏み込んだ対応をしてくる可能性があります。
というより、すでに踏み込んだ対応をするべく検討段階に入っているのです。

 

東証は現在市場改革を進め、東証一部、東証二部…といった既存の市場の最上位に「プライム市場」(仮称)という市場を作ることを検討しています。
このプライム市場に新規上場するには、市場で流通する株式数×1株あたりの株価により算出された流通時価総額100億円以上とする案が出ているのです。
なお、現在の東証一部上場企業は、時価総額に関する新基準を満たさなくても、希望すればプライム市場での上場を続けることが基本的には認められます。
ただ、TOPIX選定基準に関しては、上場子会社が選定されない可能性があるのです。
というのも、この案では、保有比率が10%を超える投資家の保有分が流通株として認められません。
親会社の持分が大きく流通株数が少ない上場子会社は、TOPIX採用企業の選定からもれる可能性があります。
このようなことから、東証が現在進める市場改革が、今後、親子上場の解消を促すとみられるのです。

 

親子上場が多い業界の銘柄について

 

着々と進められている東証の市場改革を受けて、親子上場解消の動きも広がりを見せると考えられます。
では、親子上場が多い業界の銘柄にはどのようなものがあるのでしょうか。
分かりやすいのが、電機業界や自動車業界でしょう。

 

まずは電機業界ですが、関連会社が多いイメージがあります。
例えば、「この木何の木 気になる木」のフレーズのCMソングでおなじみの日立グループですが、中核企業の日立製作所をはじめ、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズなどの子会社や関連会社が上場しています。
日立製作所は「2022年3月期に営業利益率10%以上」という目標を掲げており、構造改革を進めているのです。
実は同社は今回親子上場が市場テーマとして注目される以前から、親子上場の解消を進めていました。
その結果、以前は13社あった上場子会社は、現在は日立建機、日立ハイテクノロジーズ、日立化成、日立金属の4社に減少しています。
この他にも三菱電機の場合は上場子会社として弘電社を抱えています。

 

次に自動車業界を見てみましょう。
自動車業界は、

 

・トヨタ自動車…日野自動車、ミサワホーム、ミサワホーム中国の3社が
・日産自動車…日産車体

 

というように子会社が上場しています。
なお、トヨタに関しては、トヨタ紡織、大豊工業、共和レザー、愛三工業など関連会社が多く上場しているのも特徴です。

 

電機業界や自動車業界以外にも、GMOインターネットや住友電気工業、住友商事、日本電気、日本電信電話など多くの企業が親子上場や関連会社の上場をしていることが分かります。

 

これまでは全体的に製造業を中心に親子上場の解消が進められてきましたが、先日あったJ.フロントリテイリングによるパルコのTOBのように、現在は内需関連企業にもその動きが広がっています。

 

ちなみに、上場子会社の中で特にパフォーマンスが高いものは、2019年に関して言えば、

 

・浮動比率が高い
・外国人保有比率が高い

 

という2つの条件を満たすもので、アクティブリターン(ファンドやポートフォリオのベンチマークのリターンを上回る部分)は30%を超えています。
一方、浮動比率が低くても外国人保有比率が高い上場子会社銘柄も、2019年に関していえば、アクティブリターンは良好だったのです。
親子上場が注目されてはいたものの、今年ほどではなかった昨年の時点で高リターンだったことから、今年はこの上記2つの条件(あるいは、外国人保有比率が高いという条件のみ)を満たす上場子会社株は、さらなる上昇を見せる可能性があります。

 

ただし、注意が必要なものもあります。
上場子会社の中には、業績が厳しいものもあります。
2018年度以降、上場子会社の完全子会社化の動きを先取りしようと、上場子会社株に資金が流入していることから、冴えない業績に対し、株価が割高になっているものがあるのです。
特に今年は親子上場が市場テーマの一つとして注目されているため、年初来、上場子会社の株価上昇が目立ちます。
これから上場子会社株に投資する際は、PER、PBRをはじめとした投資指標を確認し、その会社の内容からみて割高になっていないか十分に確認しましょう。

 

次回も、親子上場について解説を進めます。

上中康司 拝